「匂い」と「臭い」と「香り」の違いを2分で解説

「匂い」「臭い」「香り」は、日常会話でもよく使われる言葉ですが、微妙なニュアンスの違いがあります。

以下に、それぞれの意味・使い方・注意点・対義語をわかりやすくまとめます。

各語の意味とニュアンスの違い

まず最初に、それぞれの違いをグラフにまとめました。

みなさんのイメージと合っているあチェックしてみてくださいね。

区分 匂い 臭い 香り
感情 中立 ネガティブ ポジティブ
使う場面 日常、一般的 汚れや腐敗 、汗など 花、香水、食事など良い印象
言い換え におい くさいにおい いいにおい・芳香

「匂い」は中立的なので、前後の文脈で意味が変わります。

たとえば「甘い匂い」といえば良い意味ですがが、「汗の匂い」は人によっては不快に感じますね。

また、「臭い」は不快な印象を与えるため、人や物に対して使うときは配慮が必要です。

例えば、「あの人臭い」は失礼な印象になります。

最後に「香り」は、上品な印象を与えるため、ビジネスや文学的な表現でも好まれます。

過剰に使うと「気取りすぎ」と思われることも、、、なくはありません。

それでは、それぞれの言葉の意味と、例文を見ながらより深いところへと掘り下げていきましょう。

匂い(におい)

  1. そのものから漂ってきて、嗅覚を刺激するもの。「香水の—」「サンマを焼く—」→臭 (にお) い1
  2. いかにもそれらしい感じ・趣。「都会の—」「生活の—」→臭 (にお) い

by デジタル大辞泉(※1と2を抜粋)

良い匂い・嫌な匂いなど、ネガティブな場合でもポジティブな場合でもどちらにも使え、抽象的な表現にも応用可能です(例:青春の匂い)。

まず「におい」とくればこれですね。

例文

〇実際に感じる場合(ポジティブ)

  • 炊きたてのごはんの匂いが、食欲をそそる。
  • 祖母の家には、懐かしいお線香の匂いがする。
  • 海に近づくと、潮の匂いが強くなってくる。
  • 焼きたてのパンの匂いが、通りにまで広がっていた。

〇実際に感じる場合(ニュートラル~ネガティブ)

  • 雨が降りそうな、あの土のような匂いがしてきた。
  • 部屋に入った瞬間、いつもと違う匂いがした。
  • 猫の匂いが部屋に残っていた。
  • ラーメンの匂いって嗅ぎ分けることができますか?

〇比ゆ的に感じる場合

  • この事件、何か裏の匂いがするな。
  • あの話には成功の匂いが感じられた。
  • 彼女の文章からは、芸術家としての才能の匂いが漂っていた。
  • その提案には、どこか危険な匂いがする。
  • 開発中の新作ゲームには、ヒットの匂いがプンプンする。

臭い(くさい・におい)

  1. 嗅覚を刺激する、不快なくさみ。悪臭。「どぶの—」
  2. いかにもそのような感じ・気配。特に、好ましくないものについていう。「犯罪の—がする」

by デジタル大辞泉

”不快な”と書かれているように、「におい」と呼ばれるものの中でも、異臭、腐敗臭、体臭などを表すネガティブな言葉です。

基本的にマイナスの意味で使われます。

また、読み方によって文法的にも違いが出てきます。

  • 「くさい」と読む場合は形容詞(例:魚が臭い)
  • 「におい」と読む場合は名詞(例:変な臭いがする)

例文

〇「くさい」

  • 靴を脱いだら、部屋中が臭くなってしまった。
  • ゴミ箱の中が臭いので、早く捨ててきてほしい。
  • 雨で濡れた犬が臭くて、思わず鼻をつまんだ。
  • このドリアンは食べる前からかなり臭い。

〇「におい」

  • 台所から何か焦げたような臭いがする。
  • この部屋、誰かが香水をつけすぎたような変な臭いがするね。
  • 「これまだ食べれそう?」「ん~、なんかが腐ったような臭いがする」

例文

また、実際にある物理的な”くさいにおい”に対して使われますが、下記のように実際には存在しない”におい”についても使われ、表現の幅を拾ててくれます。

〇実際に感じる場合

  • この取引、犯罪の臭いがする。
  • 記者はその一言に、スクープの臭いを感じ取った。

〇比ゆ的に感じる場合

  • あの人のすすめてくることって、いつも胡散臭い感じがする。
  • あの発言、なんだか嘘くさいよね。

香り(かおり)

  1.  よいにおい。香気。
  2.  顔などのにおいたつような美しさ。

by デジタル大辞泉

”よい”というニュアンスがとても強く、「におい」の中でも花を通じた心地よく感じられるときに使います。

上品で詩的な表現に使われやすく、ポジティブなニュアンスです。

花、香水、料理にもよく使われる。

比喩的な表現にも使われる(例:知性の香り)。

例文

〇実際に感じる場合

  • 朝の庭に咲くバラの香りが、風に乗って部屋まで届いた。
  • この紅茶は、ほんのりとフルーツの香りがして癒やされる。
  • 新しい本を開いたときの紙の香りが好きだ。
  • 雨上がりの森には、土と葉のやさしい香りが満ちていた。
  • 彼女のシャンプーの香りがすれ違った瞬間にふわっと広がった。

〇比ゆ的に感じる場合

  • 彼女の言葉には、どこか懐かしい香りがあった。
  • 古い手紙からは、青春の香りが立ちのぼるようだった。
  • この映画には、人生のほろ苦さと希望の香りが漂っている。
  • 彼の詩には、異国の香りが感じられて新鮮だった。
  • 新しい時代の香りが、この小さな町にも届き始めている。

対義語(反対語)

では、それぞれの対義語をまとめたいと思います。

ぴったりとはまる言葉は難しいところですが、大体ことあたりになるのではないかと思います。

単語  対義語
匂い 無臭
臭い 香しい(かぐわしい)、芳しい(かんばしい)
香り 臭い

においに関する雑学

においにまつわる慣用句・比喩表現

「におい」にまつわる慣用句や比喩表現は、日本語の中でも感覚に訴える面白い言葉が多いです。

特に「臭い」「匂い」「香り」を含む言い回しは、直接的な意味から比喩的な意味まで幅広く使われています。

「臭い」を含む表現(ネガティブが多い)

  • 臭い飯を食う=刑務所に入る、服役することの隠語。「臭い飯」とは、監獄で出される粗末な食事のこと
  • 臭い物に蓋をする=都合の悪いことを表に出さずに隠しておくことで、問題の根本解決をしない例え
  • 胡散臭い=どこか怪しくて信用できないこと
  • きな臭い=争いや戦争の気配がする、または何か事件が起きそうな雰囲気
  • 匂いを嗅ぎつける=何かの気配や情報を察知する。スキャンダルやチャンスなどによく使われる

「匂い」を含む表現

  • 匂わせる=恋愛関係や秘密を、はっきり言わずにSNSなどでそれとなく伝える行為(現代用語として定着)
  • 匂い立つような=女性の美しさなどに使われる、詩的な褒め言葉で、上品な色気を表す
  • 青春の匂い=若さや初々しさの象徴的な表現

「香り」を含む表現(ポジティブ・上品なニュアンス)

  • 香り高い=よい香りの意味から転じて、上品なというニュアンスの意味でも使われることもある
  • 知性の香り=知的で上品な印象を与える人や物事への褒め言葉
  • 春の香り=季節の変化を感覚的に表現する言い回しで、情緒的な表現として使われる

目に見えないものを”におう”のは日本だけ?

上記の比喩のように、日本では、日本では五感を比喩に拡張する文化が強いです。

  • 「味わう」=体験する
  • 「見る」=理解する
  • 「におう」=感じ取る

曖昧さや余韻を大事にする美意識があり、“匂い立つような…”というように、直接言わずに「感じさせる」表現が好まれます。

また、自然や空気の中に気配を感じる伝統があり、俳句や和歌でも「風の匂い」「季節の香り」など、抽象と感覚の融合が見られます。

このように、「目に見えないものを“におう”という感覚表現」があるのは、日本独自と言われることがありますが、完全に日本だけというわけではありません。

ですが、日本語の“におう”という語感の幅広さ・繊細さ・比喩性の強さは、他の言語と比べてもかなりユニークです。

日本語

「におう」は感覚的な“気配”を察知する言葉

「におい」は本来、嗅覚の対象ですが、日本語では「におう」を「感じ取る」「察する」「気配を読む」感覚にも広げて使います。

  • 犯罪のにおいがする
  • 裏切りのにおいがする
  • 成功のにおいが漂ってきた
  • 匂い立つような美しさ

これらは 目に見えない感情や出来事、雰囲気を“嗅覚”で感じ取る 日本語的な感性の表れです。

英語

では、英語での感覚はどうでしょうか?

“smell” や “scent” を比喩的に使うこともありますが、頻度や表現の幅は日本語ほど広くありません。

「怪しい・変だ」と感じるときに“smell”を使うことはありますが、文学的な感覚の余韻は日本語ほど強くないようです。

  • Something smells fishy.(何か怪しいぞ)
  • I can smell trouble.(トラブルの予感がする)

フランス語

フランス語もときどき嗅覚を比喩に使いますが、美しさや色気に「匂う」を使う表現は少ないようです。

中国語

においの比喩はありますが、日本語ほど情緒的ではない傾向があります。

  • 聞到火药味(火薬のにおい=争いの予感)
  • 臭味相投(悪党同士は気が合う)

においの強さの単位とは?

においには、「くさい」と感じるにおいや、「かおり」として心地よく感じるにおいなど、さまざまな種類があります。

そして、それぞれのにおいには強さの違いもあります。では、その「においの強さ」は、どうやってはかるのでしょうか?

実は、特に「くさい」と感じるような強いにおい(悪臭)には、ちゃんとした単位=においのものさしがあるんです。

それが「臭気指数(しゅうきしすう)」というものです。

臭気指数は、「このにおいを何倍にうすめたら、におわなくなるか」という考え方で決められます。

この臭気指数は、ゴミのにおいや工場から出るにおいなど、周りに迷惑をかける「くさい」タイプのにおいを調べるときに使われます。

実際、日本の「悪臭防止法」でも使われている、大切な指標です。

では、ここで疑問に思うかもしれません。

「くさいにおい」に単位があるなら、「いいにおい=かおり」にもあるのでは?、と。

でも実は、「かおりには正式な単位はありません」。

その理由は、「かおり」は人それぞれ感じ方がちがう、感覚的で楽しむものだからです。

たとえば、ある香水が好きな人もいれば、強すぎて苦手に感じる人もいますよね。

だから、「かおり」を数字で決めることはむずかしく、言葉で表現するのがふつうです。

ただし、科学的に「どんな香り成分が入っているか」などを調べることはできます。

香水やお茶の世界では、専門家が「フローラル系の香り」「ウッディな印象」などと表現しながら、かおりを比べたり楽しんだりしています。

まとめ

このように、「におい」「臭い」「香り」は、いずれも嗅覚にまつわる言葉ですが、使い方やニュアンスには明確な違いがあります。

また、においにまつわる言葉は日本語において、実際のにおいを超えて感覚・雰囲気・気配を表す比喩としても使われてもいましたね!

この知識が、みなさまの人生に少しでも彩をもたらせてくれることを、祈っております。