辞書で「さびしい」を調べると、「淋しい」と「寂しい」の2種類出てきますよね。
どちらも、”もの悲しく心細い”時や”ひっそりとした静か”な時に使いますが、実際のところ、みなさんあまり区別なく使われているのが現状です。
ですが、しっかりと使い分ける方法が2つあるんです。
その方法を知れば、キッチリ使い分けることができるので、紹介したいと思います。
「淋しい/寂しい」を使い分ける方法
意味
辞書で「寂しい・淋しい」を調べると下記のようになっています。
さびしい【寂しい・淋しい】
①あってほしいものが欠けていて満たされない気持ち。
②人恋しくもの悲しい。
③人けがなくひっそりとしている。心細いほど静か。
by 三省堂 大辞林
このようにみると、基本的には「寂しい」も「淋しい」も違いはないのですが、もっとそれ以外に隠された使い分けがあるんです。
それでは、2つの使い分け方を紹介していきましょう。
①常用漢字による使い分け
現代国語の目安となっている”常用漢字”というものがあります。
実は「寂しい」は常用漢字ですが、「淋しい」は常用漢字には入っていないんです。
元々、「寂」という漢字には「さびしさ」を表す意味が入っていますが、「淋」という漢字にその意味が入ってないからかもしれません。
このことから、テレビなどのメディアでは、「寂しい」と書かれることがほとんどなので、もしあなたも迷ったら「寂しい」を書けば間違いはありません。
ですが、常用漢字に入っていないとは言っても「淋しい」を使うことは決して間違いではありません。
常用漢字はあくまでも目安の範囲です。
②意味による使い分け
環境や周囲が「さびしい」時
”もの静かで人けがないひっそりした状況”や、”なにか欠けていて物足りない状況”がある時は、「寂しい」を使います。
「寂」には、”ひっそりとして静かな様子”という意味があるので、「静寂」「閑寂」「寂び(さび)」という言葉にも使われていますね。
客観的にみて、周囲の状況や環境が「さびしい」時に使います。
■例文
- 玄関に何もないのは寂しいな。観葉植物でも置こうか。
- この街は夜になると、めっきり寂しくなるんです。
感情的に「さびしい」時
”人恋しくて心細い””人がいなくて悲しい”時は、「淋しい」を使います。
「淋」には、「さびしい」という意味はありませんが、「絶え間なく水がしたたる」という意味があります。
この意味から、”したたり落ちるような止まらない涙”のイメージが連想され、「淋しい」という漢字が使われるようになりました。
主観的に、自分自身が感じる「さびしい」時ですね。
「淋」の”さんずい”が、悲しい涙を表していると考えると、覚えやすいと思います。
■例文
- 東京にいる彼氏と3ヶ月も会えなくて淋しい。
- 家族と離れてもう2年。淋しくないといえば嘘になる。
もっと詳しく知りたい
正式な読み方とは?
「寂しい・淋しい」の読み方ですが、「さびしい」「さみしい」の2通りありますよね。
元々は、「さぶし」という言葉が語源になっていて、それが「さびし」に変化して「さびしい」となってゆきました。
なので、「さびしい」が本道なんです。
現代では「さみしい」の方がよく使われている印象はありますが、現代国語の目安である”常用漢字表”では、「さびしい」のみが記載されています。
「さみしい」は常用漢字ではないのですね。
もちろんどちらでも間違いではありませんが、通常時では「さびしい」を使っておけば間違いはありません。
歌の歌詞などでは、語呂や歌いやすさから、ほとんどが「さみしい」と使われることが多いので、本来の「さびしい」がどんどん使われなくなっていっているのかも知れませんね。
実際のところ、みんなはどっちを使っているの?
では最後に、実際にみんなはどのように使っているかを、10~30代の男女2000人にアンケートしてみました。
「さびしい/さみしい」の漢字は、主にどの字を使っていますか?
- 16% 「淋しい」
- 60% 「寂しい」
- 17% 意味によって使い分けている
- 7% 特に意識していない
「寂しい」は、どのように読んでいますか?
- 47% 「さびしい」
- 43% 「さみしい」
- 10% 特に意識をしていない
やはり「寂しい」を使っている人が多いんですね。
常用漢字表に掲載されているだけはあります。
ですが、読み方としては、「さびしい」「さみしい」と半々くらいという結果になりました。
読み方に関しては特にどちらが優勢と言うことはありません。
もし、自分が書いた文章で、「寂しい」を、「さびしい」もしくは「さみしい」と読ませたい時は、ひらがなで書くほうが良さそうです。
以上、レポートでした。