「さびしい」と「さみしい」って、使い分けの方法って意外にわからないですよね。
日常会話では、どちらを使っているかアンケートをとったところ、「さびしい」を使う人は53%で、「さみしい」を使う人は47%と、ほぼ半々に分かれています。
特に意識することなく使っているということですね。
今回は、「さみしい」と「さびしい」の違いを、1分で読めるようにまとめてみました。
「さみしい/さびしい」を使い分ける方法
まず、使い分けるためにそれぞれを辞書で引いてみることにします。
辞書で「さびしい」を調べると下記のようになっています。
さびしい【寂しい・淋しい】
①あってほしいものが欠けていて満たされない気持ち。
②人恋しくもの悲しい。
③人けがなくひっそりとしている。心細いほど静か。
by 三省堂 大辞林
また、「さみしい」と辞書で調べると「”さびしい”を参照」、もしくは「”さびしい”の音変化」と言ったようなことが書かれていることが多いです。
実際、「さびしい」という言葉の方が先にできたのは事実です。
元々「さぶし」という言葉が、平安時代に「さびし」になりました。
そしてさらに変化し「さびしい」となってゆきました。
実に1000年以上も歴史のある言葉なんですね。
それに対して、江戸時代になって「さびしい」が俗語・方言としてさらに変化し、「さみしい」という言葉ができたのです。
なので比較的新しい言葉なんです。
この変化した理由として、「さぶい」が「さむい」へと変わっていったように、日本語は「バ行」の音が「マ行」に変化することが多いからなんです。
他の例としては、このような言葉があります。
- うつぶく ⇒ うつむく
- けぶり ⇒ けむり
- さぶい ⇒ さむい
つまり、「さびしい」も「さみしい」も、たどって行けば祖先は同じ言葉なんですね!
語源的には、同じ意味と考えてもらってOKです。
①常用漢字であるかどうか
ですが、言葉と言うものは生きています。
「さみしい」も、1000年かけて変化して生まれたように、現代でもまた少しずつ変化しています。
「さびしい」と「さみしい」の最も大きな違いは、内閣告示されている”常用漢字”になっているかどうかということです。
「さびしい」は、「寂しい」の読み方として常用漢字に掲載されています。
ですが「さみしい」は含まれていません。
つまり「寂しい」には、「さびしい」の読み方が現代国語としては適していると言われているのと同じということなんです。
やはり、歴史のある本家は強いと言うことですね。
かといって、常用漢字でない「さみしい」も一般的に使われるので、決して間違った使い方ではありません。
(常用漢字は、正誤の判断ではなく、現代における目安としての位置づけです)
放送用語としては「さびしい」が一般的なので、もし「寂しい」の読み方で迷ったら「さびしい」と読めば間違いはありません。
②「寂しい」と「淋しい」の読み方の違い
「寂しい」と「淋しい」は、両方とも「さみしい/さびしい」と、どちらでも読むことが可能です。
ですが、それぞれの漢字に、読まれやすい”読み方”があるのはご存知ですか?
説明すると、「あ、確かにそうかも!」と思う人が多いようです。
意外にも、無意識で使い分けているようなんですね。
今回は、10~30代の男女1500人にアンケートをとってみました。
実際のアンケートの結果はこちらです。
Q:もの静かで「寂しい」は、何と読みますか?
- 45% さびしい
- 55% さみしい
Q:人恋しくて「淋しい」は、何と読みますか?
- 69% さびしい
- 31% さみしい
「寂しい」の読み方
”もの静かで人けがないひっそりした状況”や、”なにか欠けていて物足りない状況”がある時は、「寂しい」が使われることが多いです。
客観的にみて、周囲の状況や環境が「寂しい」」時に使います。
その時の「寂しい」の読み方は、やや「さみしい」と読む人が多いです。
■例文
- 玄関に何もないのは寂しいな。観葉植物でも置こうか。
- この街は夜になると、めっきり寂しくなるんです。
「淋しい」の読み方
また、”人恋しくて心細い””人がいなくて悲しい”時は、「淋しい」という漢字が使われることが多いです。
主観的に、自分自身が感じる「淋しい」時ですね。
「淋」という時は、「絶え間なく流れる水」という意味があるので、あふれ出る涙を連想し、この字が使われるようになったと言われています。
その時の「淋しい」の読み方は、圧倒的に「さびしい」と読む人が多いです。
■例文
- 東京にいる彼氏と3ヶ月も会えなくて淋しい。
- 家族と離れてもう2年。淋しくないといえば嘘になる。
ネットで調べると、この読み方が真逆のことを書いている記事も多々見受けられます。
実際アンケートをとってみたら、このような結果となりました。
やはり、本当の言葉の使い方って、リサーチしないと本当の姿が見えませんね。
まとめ
このように「さびしい」も「さみしい」も、辞書では同じ意味であるように記載がされています。
ですが、状況やその時の環境によって、やや使い分けされているのもまた真実です。
言葉は生きています。
あと数百年もすれば、下記のように完全に使い分されている可能性も十分にあります。
- 「寂しい(さみしい)」=「静かなさま。何かが物足りない様子。」
- 「淋しい(さびしい)」=「人恋しくて悲しい。」
言葉って面白いですよね。