「書類送検」と「逮捕」の違いとは? 警察と検察の役割分担をわかりやすく解説

ニュースで毎日のように聞く言葉、「逮捕」と「書類送検」。

みなさんは混同していませんか?「〇〇容疑者を逮捕」と聞く日もあれば、「〇〇容疑者を書類送検」と聞く日もあり、どちらも「警察に捕まった」というイメージでひとまとめにされがちです。

ですが、この二つはそもそも性質の異なる手続きなのです。


逮捕は被疑者の身柄を拘束するための手続きであるのに対し、書類送検は、身柄を拘束していない事件について書類や証拠物とともに事件を検察官へ送致することを一般に指します。

つまり、厳密に言えば「逮捕」と「書類送検」は対義語ですらありません。

しかも「書類送検」「送検」という言葉自体、刑事訴訟法が正式な手続名として使っているものではなく、法律では基本的に「送致」と表現されています。

この記事では、逮捕と書類送検の違いを基礎から整理したうえで、警察と検察がどのように役割を分担しているのか、「全件送致主義」の例外である微罪処分、最新の犯罪白書の統計なども交えて解説していきます。

「逮捕」と「書類送検」の違い

「逮捕」とは何か

逮捕とは、犯罪の捜査のために被疑者の身体を強制的に拘束する手続きです。

通常逮捕では、刑事訴訟法199条により、まず被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる「相当な理由」が必要とされ、そのうえで被疑者の年齢や境遇、犯罪の軽重や態様、逃亡のおそれ、罪証隠滅のおそれなどを踏まえて逮捕の必要性が判断されます。

単に「犯罪の疑いがある」というだけで当然に逮捕されるわけではなく、捜査は在宅のまま進めることもできるので、身柄を確保する必要性が認められるかどうかがポイントになります。

逮捕後の身柄拘束には厳しい時間制限が設けられています。

司法警察員は、逮捕した被疑者を留置する必要があると考える場合、原則として身体を拘束した時から48時間以内に、書類や証拠物とともに被疑者を検察官へ送致しなければなりません(刑事訴訟法203条)。

留置の必要がないと判断すれば、直ちに釈放しなければならない点も同じ条文の中で定められています。

身柄の送致を受けた検察官は、原則として被疑者を受け取った時から24時間以内、かつ最初に身体を拘束された時から72時間以内に、引き続き身柄拘束が必要であれば裁判官に勾留を請求します。

勾留請求などをしない場合には釈放することになるため(同法205条)、一般には「逮捕後、勾留請求まで原則最大72時間」と説明されることが多いです。

もっとも、刑事訴訟法206条にはやむを得ない事情によって時間制限を守れなかった場合の例外規定もあり、厳密には「絶対に72時間を超えない」という意味ではありません。

その後、裁判官が勾留を認めれば、さらに身柄拘束が続くこともあります。

「書類送検」とは何か

一方の「書類送検」とは、一般に、被疑者の身柄を拘束していない事件について、捜査書類や証拠物などとともに事件を検察官へ送致することを指し、在宅のまま捜査が進む「在宅事件」でよく使われる表現です。

逮捕事件にある48時間・24時間といった具体的な時間制限は、在宅事件にはありません。とはいえいつまでも送致しなくてよいわけではなく、刑事訴訟法246条は、司法警察員が犯罪の捜査をしたときは原則として「速やかに」書類および証拠物とともに事件を検察官へ送致しなければならないと定めています。

ここで重要なのは、書類送検が「起訴するかどうかを決めるため、事件を検察官へ引き継ぐ手続き」だという点です。

書類送検された段階では、原則として起訴も不起訴もまだ決まっていません。

ですから、「書類送検された=有罪」「書類送検された=前科がついた」という理解は誤りだといえます。

もう一つ注意したいのは、逮捕と書類送検が必ずしも二者択一ではないことです。

いったん逮捕されたものの、その後釈放されて在宅で捜査が続けられ、最終的に事件が検察官へ送致されるケースも実際にあります。

 

このテーマの難しいところ

実は「送検」は法律上の正式な手続名ではない

多くの解説記事は、逮捕と書類送検の違いを説明するところで止まっています。

しかし、もう一歩踏み込むと面白いポイントがあります。

刑事訴訟法203条や246条などで実際に使われている言葉は「送致」であり、ニュースなどで耳にする「送検」「書類送検」は、法令上の正式な手続名ではありません。条文を読み比べてみると、これは私自身も少し意外でした。

一般には、逮捕された被疑者の身柄を伴って検察官へ送る場合を「身柄付き送致」「身柄送検」などと呼び、身柄を拘束していない事件を書類や証拠物とともに送る場合を「書類送検」と呼んで区別しています。

つまり、ニュースで「書類送検」と報じられていても、法律上行われている手続きの中心はあくまで「事件の送致」なのです。

「送検された」という言葉だけから、有罪・無罪や事件の重大性まで判断することはできません。

警察と検察、それぞれの役割


なぜ警察は事件を自分たちだけで終わらせず、検察官へ送るのでしょうか。

大きな理由は、警察には刑事裁判を始めるための「公訴」を提起する権限がないからです。

警察は、事件を認知し、関係者から事情を聴き、証拠を集め、必要に応じて逮捕するなど、犯罪捜査の中心的な役割を担っています。

一方、検察官も捜査権限を持つ捜査機関であると同時に、警察などから送致された事件について証拠やさまざまな事情を検討し、原則として起訴するか不起訴にするかを判断します。

刑事訴訟法247条は「公訴は、検察官がこれを行う」と定めており、日本ではこれを一般に「起訴独占主義」と呼びます。

とはいえ、検察審査会による起訴議決を経た強制起訴などの例外的な制度もあるため、「どんな場合でも検察官以外は絶対に起訴できない」とまで理解するのは正確ではありません。

検察官は「犯罪が成立するかどうか」だけで機械的に起訴を決めるわけでもありません。

刑事訴訟法248条は、犯人の性格・年齢・境遇、犯罪の軽重や情状、犯罪後の状況などを考慮し、訴追する必要がないと判断した場合には起訴しないことができると定めており、これが「起訴猶予」の法的根拠になっています。

組織のうえでも、警察と検察は別の系統に属しています。

国には国家公安委員会の管理下に警察庁が置かれ、各都道府県には都道府県公安委員会が管理する都道府県警察があります。

対して検察庁は法務省に置かれる特別の機関で、警察と検察は「上司と部下」のような単純な関係ではなく、互いに異なる役割を持ちながら刑事手続きを進めているのです。

「すべての事件は検察に送られる」は本当か

刑事訴訟法246条は、司法警察員が犯罪の捜査をしたとき、法律に特別の定めがある場合を除き、原則として速やかに書類や証拠物とともに事件を検察官へ送致しなければならないと定めています。これが一般に「全件送致主義」と呼ばれる原則です。

とはいえ、246条には明確な例外もあります。同条ただし書は「検察官が指定した事件については、この限りでない」と定めており、その代表例が微罪処分です。

微罪処分とは、犯罪事実が極めて軽微で、被害の程度や被疑者の事情などが一定の基準に該当し、あらかじめ検察官が指定した事件について、警察段階で処理し、個々の事件について通常の検察官送致を行わない取扱いを指します。

つまり「警察が捜査した犯罪事件は例外なく一件残らず検察官へ送られる」という説明は、厳密には正確ではありません。一方で、「書類送検されたのに警察だけで事件が終わった」という表現も成り立ちません。

「書類送検された」ということは、すでに事件が検察官へ送致されたことを意味するからです。

正確には、原則は検察官への送致だが、微罪処分など一定の例外では個別の送致が省略される、と理解するのがよいでしょう。

もっと「逮捕」と「書類送検」について知りたい

図解:逮捕の有無と起訴の有無は別の軸

逮捕と書類送検を理解するうえで、特に誤解されやすいのが「逮捕=重い罪」「書類送検=軽い罪で前科もつかない」というイメージです。

しかし実際には、身柄を拘束する必要があるかどうかと、最終的に起訴するかどうかはまったく別の判断です。

おおまかに整理すると、次のようなパターンに分けられます。

身柄の状態 最終処分 内容
逮捕された 起訴 逮捕・勾留などを経て起訴され、刑事裁判の被告人となる。起訴後に保釈される場合もある
逮捕された 不起訴 捜査の結果、嫌疑不十分・起訴猶予などにより起訴されず、身柄拘束されていれば釈放される
書類送検(在宅) 起訴 身柄を拘束されないまま起訴されることがある。要件を満たせば略式手続によって罰金・科料が科される場合もある
書類送検(在宅) 不起訴 身柄を拘束されないまま捜査が進み、起訴猶予・嫌疑不十分などで刑事手続きが終わる

書類送検された事件でも、その後起訴され、有罪の裁判が確定すれば前科がつきます。ただし、起訴された時点ではまだ前科がつくわけではありません。

逆に、逮捕されても不起訴になれば、その逮捕事件について有罪判決を受けたわけではないので、前科はつかないのです。

整理すると、「逮捕されたかどうか」は主として捜査段階で身柄を拘束する必要性の問題であり、「起訴されるかどうか」は証拠の状況や犯罪の内容、情状などを踏まえた訴追判断の問題です。

そして「前科がつくかどうか」は、有罪の裁判が確定したかどうかという、さらにその先の問題になります。

数字で見る「起訴か不起訴か」

では実際、検察官が処理した事件は、どのような結論になっているのでしょうか。

法務省の令和7年版犯罪白書によると、令和6年(2024年)の検察庁終局処理人員総数は78万2,735人で、主な内訳は公判請求が8万287人、略式命令請求が15万8,783人、起訴猶予が42万9,432人、その他の不起訴が6万4,586人、家庭裁判所送致が4万9,647人となっています。

処理区分 令和6年の人員 意味
公判請求 80,287人 正式な刑事裁判を求める起訴
略式命令請求 158,783人 簡易裁判所の略式手続による罰金・科料を求める起訴
起訴猶予 429,432人 犯罪の嫌疑は認められるものの、諸事情を考慮して起訴しない処分
その他の不起訴 64,586人 嫌疑不十分・嫌疑なしなどを含む不起訴
家庭裁判所送致 49,647人 主に少年事件として家庭裁判所へ送られたもの

同白書によると、令和6年の検察庁終局処理人員についての起訴率は32.6%でした。

ただ、この「起訴率」の分母については少し注意が必要です。

78万2,735人全員を分母として単純計算した数字ではなく、犯罪白書における起訴率は原則として「起訴人員÷(起訴人員+不起訴人員)」で算出されており、家庭裁判所送致などはこの計算の分母に含まれません。実際に電卓を叩いて確かめてみると総数を分母にした場合とは数字が合わず、最初は計算を間違えたのかと二度見してしまいました。

同じ基準でみると、不起訴となった割合は約67.4%になります。

つまり、起訴・不起訴の判断対象となった人について見ると、不起訴のほうが多いということです。また、検察庁終局処理人員総数78万2,735人に対して公判請求は8万287人ですから、正式な刑事裁判を求める公判請求になった人は総数の約10.3%にとどまります。

とはいえ、この数字だけを見て「送検されてもほとんど問題にならない」と考えるのは適切ではありません。

起訴率は罪名によって大きく異なり、個々の事件の証拠関係や被害の程度、情状などによって処分は大きく変わります。

統計はあくまで全体の傾向を示す数字として受け止めておくのがよいでしょう。

少年事件は仕組みが大きく違う

ここまでは主として成人の事件を念頭に説明してきましたが、少年事件には別の仕組みがあります。

少年法における「少年」とは20歳未満の者を指し、民法上の成年年齢は18歳に引き下げられたものの、少年法では現在も20歳未満が少年にあたります。

このうち18歳・19歳は「特定少年」として一定の特例が設けられています。

14歳以上20歳未満の少年が罪を犯した「犯罪少年」の事件は、警察から直接、または検察官を経由して家庭裁判所に送致され、原則として家庭裁判所が少年の処遇について判断します。

成人の刑事事件では検察官が起訴すれば地方裁判所や簡易裁判所などで刑事裁判が行われますが、少年事件ではまず家庭裁判所が少年の性格、家庭環境、非行の内容などを調査し、更生のためにどのような処遇が適切かを判断する点が制度の大きな特徴です。

家庭裁判所は、審判不開始、不処分、保護観察、少年院送致などの処分を行うほか、一定の重大事件などについて刑事処分が相当と判断した場合には、事件を検察官へ送り返す「検察官送致(いわゆる逆送)」をすることもあります。

なお、行為時14歳未満の「触法少年」は刑事責任を問われる犯罪少年とは扱いが異なり、原則として児童相談所など児童福祉機関による手続きが先行し、一定の場合には都道府県知事または児童相談所長から家庭裁判所へ送致される流れになります。

このように、成人事件と少年事件では、事件が送られる先や判断の目的、手続きの流れそのものが異なるのです。

書類送検でも実名報道されることがあるのはなぜか

「逮捕=実名報道、書類送検=匿名」というイメージを持っている人もいるかもしれませんが、成人事件についてはそのような一律のルールがあるわけではありません。

実名で報道するか匿名で報道するかは、各報道機関が事件の重大性、社会的関心、公益性、被疑者の立場など、さまざまな事情を踏まえて判断しています。

そのため、著名人が関わる事件や社会的な関心が高い事件などでは、逮捕されていなくても書類送検の段階で実名が報じられることがありますし、

逆に逮捕されたからといって必ず実名で報道されるとも限りません。身柄拘束の有無と、実名・匿名の報道判断は、案外別の問題なのです。

なお、少年事件については少年法による報道上の制限があり、成人事件とは異なるルールが関係します。

また、18歳・19歳の特定少年については、起訴後の報道に関して例外が設けられています。

逮捕・書類送検・その後に関わる用語

関連してよく登場する言葉も整理しておきます。

用語 意味
身柄付き送致
(身柄送検)
逮捕した被疑者について引き続き身柄拘束が必要と判断し、原則48時間以内に書類・証拠物とともに被疑者を検察官へ送致すること
親告罪 原則として、被害者など法律で告訴権を認められた者の告訴がなければ公訴を提起できない犯罪
前科 一般に、有罪の裁判が確定した経歴を指す。逮捕や起訴だけで前科がつくわけではない
前歴 法律上の統一的な定義がある用語ではないが、一般に、捜査機関から被疑者として捜査・処理を受けた経歴などを指して使われる。前科とは異なる
起訴猶予 犯罪の嫌疑は認められるものの、犯人の性格・年齢・境遇、犯罪の軽重や情状、犯罪後の状況などを考慮して検察官が起訴を見送る不起訴処分
略式命令請求 一定の比較的軽い事件について、被疑者の同意を前提に、正式な公判を開かず簡易裁判所が書面審理によって100万円以下の罰金または科料を科す略式手続を求める起訴

 

まとめ

逮捕は「被疑者の身柄を強制的に拘束するための手続き」、書類送検は「身柄を拘束していない事件を、書類や証拠物とともに検察官へ送致すること」を一般に指す言葉です。

そもそも両者は完全な対義語ではなく、逮捕された後に釈放され、在宅で捜査を受けたうえで事件が送致されることもあります。

刑事訴訟法が使っている正式な表現は基本的に「送致」であり、「送検」「書類送検」はあくまで一般に使われている呼び方にすぎません。

警察が捜査した事件は原則として検察官へ送致されますが、「全件送致主義」にも微罪処分などの例外があります。

そして、逮捕の有無、起訴・不起訴、有罪・無罪はそれぞれ別の段階の問題です。特に重要なのは、「逮捕=前科」でも「書類送検=軽い処分」でも「起訴=前科」でもないということで、有罪の裁判が確定して初めて、一般にいう前科が生じます。

最新の令和7年版犯罪白書によると、令和6年の検察庁終局処理人員は78万2,735人で、起訴率は32.6%でした。

ただし、この起訴率は終局処理人員全体を単純に分母とした数字ではなく、起訴人員と不起訴人員を基礎に算出されたものです。さらに少年事件では、原則として家庭裁判所が処遇を判断するという、成人事件とは異なる仕組みが働いています。

こうした違いを知っておくと、ニュースで「逮捕」「書類送検」「起訴」「不起訴」といった言葉が出てきたとき、それぞれが刑事手続きのどの段階を意味しているのかを、より正確に読み解けるようになるはずです。

■参考文献・出典

※本記事は、刑事訴訟法、裁判所・法務省・警察庁などの公的資料をもとに、刑事手続きの一般的な仕組みを解説したものです。個別事件では、罪名、証拠関係、逮捕・勾留の状況などによって手続きが異なる場合があります。実際に事件の当事者・関係者となった場合は、弁護士などの専門家にご相談ください。