「書類送検」と「逮捕」の違いとは? 警察と検察の役割分担をわかりやすく解説

本日は、「書類送検」と「逮捕」の意味の違いから、警察や検察の役割についてわかりやすく解説したいと思います。

これを最後まで読めば、間違いなくニュースの理解度が飛躍的にアップし、ニュースにより興味がでることは間違いないですよ。

「書類送検」と「逮捕」の違い

TVの報道で、罪を犯してしまった人が「書類送検されました」とか「逮捕されました」と言われることがよくありますよね。

使いどころが似ているせいか、書類送検逮捕も、なんとなくも同じような意味で捉えている人は多いようです。

ですが、、、この両者は意味合いは全然違うんです。

なぜなら、すべての事件で「逮捕」が行われるわけではないからですね。

まずは、両者の違いの一覧を見てみましょう。

言葉 逮捕 書類送検
行う人 ほぼ警察 警察が検察に行う
意味、内容 被疑者の身柄を拘束する法的手続き 捜査内容を検察に送る
行う理由 被疑者が逃亡や証拠隠滅の恐れがあるから 起訴する権限が警察にないため
行う時 逮捕状が出た時、現行犯逮捕と緊急逮捕時 犯人特定後、逮捕後

ちょっとわかりづらいですね笑

まず、要点だけ押さえておくと下記のようになります。

逮捕とは、「警察などが被疑者の身柄を強制的につなぎ止めておくための法的な手続き」のことです。

書類送検とは、「起訴してもらうため、検察に捜査資料などを送る手続きこと」です。

このように、両者は全然違う段階での手続きの話なので、基本的に比べることすらできないんです。

ですが今回は、、、若干強引ですが、同じフィールドで比較できるように詳しく説明しますね!

刑事事件が起こると、警察はその犯罪を捜査し犯人を特定します。

そして、検察にその事件を起訴するかどうかの判断をゆだねるため、その捜査資料や証拠品を検察に渡します。

これを「送検」といいます。

なぜ警察は、検察に捜査資料を送るかというと、警察には「起訴する権限」がないんです。なので、起訴する権限がある検察に捜査資料を渡して、起訴するかどうかの最終判断を委ねるしかないのです。

すべての事件は検察を通るわけですね。

なので、警察が犯人を逮捕していたら、検察に捜査資料とともに犯人の身柄も一緒に渡すこととなります。

これが、「身柄付送検」と言います。

そして、犯人がわかっているけれど、証拠隠滅や逃亡の危険性が無い場合、犯人の身柄を確保する必要が無いため、書類だけ検察に送ることを「書類送検」と言います。
(つまり、事件を取り扱う主体が警察から検察へ移行した程度のことで、この地点では処分などとは一切関係がありません。)

なので、ニュースで「書類送検されました」と報道されていたら、「犯人に逃亡や証拠隠滅の恐れがない事件」と思ってOKです。

一概に言えませんが、、、逮捕するほどでもない比較的小さな事件は、書類送検だけのことも多く、比較的小さな事件といえる可能性は高いです。

逆に「逮捕された」と報道されると、証拠隠滅や逃亡の危険性があると判断されたと言うことで、比較的大きな事件といえる可能性は高いです。

これは、今回違うフィールドの話をわかりやすく、強引に同じフィールドに置き換えたので、あくまでの目安として考えてくださいね!

このように書類送検とは、警察と検察の役割・権限が分担されていることから行われるのです。

この分担は、事件が起きてから、「事件発生」→「逮捕」→「送検」→「起訴」→「判決」までの流れを順に追ってみていくとよりわかりやすくなるので、次にまとめてみました。

これで、さらにニュースが分かるようになるはずですよ!

事件が起きてからの流れ

事件発生~警察による捜査の開始

事件が起こったとします。刑事事件として警察が捜査は、次のようなことがきっかけで開始されます。

告訴・告発

事件に被害者がいて、その被害者が犯人に刑事処罰を受けてほしいと思ったら、警察などの捜査機関に事件を申告します。

申告する人が被害者ではない場合、告発と言います。

被害届

被害者が、その事実を警察に申告することです。そして捜査機関が受理し、事件性があると判断されると、被害者が処罰の意思がなかったとしても捜査が始まります。

通報を受ける、マスコミの取材など

被害者や第三者から通報を受けたりした場合、捜査が開始されます。また、マスコミ独自の取材から犯罪が明るみに出て、捜査が開始されることもあります。

自首

犯罪を犯した人が、自ら警察に出頭し、事件を申告することです。

職務質問

挙動不審者や事件起こす疑いのある者に対して、警察が職務質問をします。職務質問には答える義務はありませんが、これをきっかけに捜査が開始されることもあります。

警察の役割

①逮捕

警察は、事件発覚後に捜査を行います。そして、犯人が特定できたら逮捕しようとするのですが、その逮捕には、状況に応じて「通常逮捕」「現行犯逮捕」「緊急逮捕」の3つの方法がとられます。

通常逮捕とは?

事件発覚後、警察などの機関が捜査し犯人が特定できたら裁判所に「逮捕状」を請求します。そして裁判所も逮捕しても問題ないと判断すれば逮捕状が発布されます。その逮捕状をもとに逮捕することを言います。令状がなければ、どんなに疑わしくても逮捕はできません。

現行犯逮捕とは?

現在、明らかに犯罪を行っている、または完了したばかりの者に対して逮捕することです。犯人を取り逃がす可能性があるので、捜査令状が無くても逮捕できます。また、警察や検察だけでなく、一般の人も逮捕可能です(私人逮捕)。

緊急逮捕とは?

重大な犯罪において、裁判官の逮捕状を求めると証拠隠滅や逃亡などの恐れがある時、例外的に捜査機関が逮捕理由を告げて、被疑者を逮捕することです。逮捕状の請求は逮捕後に行います。もし発行されなければ、釈放しなければなりません。

②送検

警察には刑事裁判を求める公訴をする権限がありません。なので、逮捕した後は捜査した内容を検察に送り、公訴の権限がある検察に次のアクションを委ねなくてはなりません。

この、警察が捜査した内容を検察へ送ることを「送検」と言い、法律的には「送致」と言われます。捜査した内容は、どんな事件であっても捜査結果や証拠品などを検察へ送致しなければなりません。

この時、被疑者が逮捕されていたら「身柄付送検」と言い、書類のみでの送検を「書類送検」と呼びます。

書類送検とは?

一般的に事件の規模がそれほど大きくなく、被疑者の逃亡や証拠隠滅の可能性が無いと判断された場合、逮捕せずに書類だけ検察に送ることです。

身柄付送検とは?

もし被疑者を逮捕していたら、48時間以内に身柄を捜査資料と共に検察に送らなければなりません。

検察の役割

警察から事件が送致されると、検察の出番です。

身柄付送検だった場合、被疑者を、24時間以内に裁判所へ起訴、もしくは勾留請求するか、釈放するかを決定しなければなりません。

もし、送られた資料だけで証拠としての材料が足りなかったりすると、不十分なものを補うために検察官自らが捜査を行ったり、警察に補充捜査を行わせたりします。検察も警察と同じく捜査権を持っているんですね。

そして集まった情報や証拠品をもとに、最終的に被疑者を起訴するかどうかの判断を行います。

起訴

証拠が集まり有罪だと判断すると、検察官は起訴します。起訴とは、裁判所の審判を求める意思表示のことです。公判に出席することもありますが、最終的な判定は裁判所に委ねられることになります。

不起訴

勾留請求すると、10日間身柄を拘束することができますが、延長しても最大23日までです。この期間までに証拠がそろわないと釈放か不起訴処分となります。

不起訴になるパターンは多数有りますが、主な理由はこちらです。

嫌疑不十分

勾留期間中に、犯罪を立証するために証拠が足りず、起訴しても有罪になりそうにない場合、もしくは自供しなかった場合、嫌疑不十分として不起訴処分を下すことです。

嫌疑なし

犯人を特定する証拠が無い場合にされる判断です。誤認逮捕もこれにはいります。警察からすると最も権威が失われる判断ですね。

起訴猶予

犯罪を立証するのに十分な証拠があったとしても、検察官が、犯人の性格、年齢、境遇や犯罪の重軽、もしくは情状酌量の見地から判断し、「示談が成立している」「罪が軽い」「十分に反省している」等の理由で不起訴にすることです。

告訴の取り下げ

被害者の告訴がなければ、検察が起訴できない犯罪を「親告罪」と言います。親告罪の場合、被害者からの告訴により警察は被疑者を逮捕して送検しますが、もし何らかの理由により被害者が告訴を取り下げると、親告罪の要件が満たされなくなり、不起訴となってしまいます。

裁判所の役割

検察により起訴が決定されると、裁判所がその事件が有罪か無罪かの最終的な判定を行います。

以上が、刑事事件の主な流れとなります。

疑問、Q&A

逮捕や書類送検されたら、前科や前歴はつくの?

前科

前科とは、起訴され、裁判所から有罪判決を受けた記録のことです。なので、逮捕だけ、書類送検だけでは前科とはなりません。

もちろん無罪判決や不起訴でも前科とはなりません。

前歴

前歴とは、警察によって被疑者として疑われ、捜査の対象となったことがあるかどうかという記録です。逮捕はもちろん、書類送検されても前歴としての記録は残ってしまいます。不起訴となっても記録は残ります。