お菓子の袋やペットボトルのキャップをよく見ると、賞味期限の日付のすぐ後ろに「A63」や「+K2」といった短い記号が付いていることがあります。
日付のほうは誰が見ても読めるように印字されているのに、隣の記号だけは何の説明もないので、気になりつつもそのまま袋を捨ててしまう人が多いのではないでしょうか。

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実はこの記号、見た目は似ていても中身は二種類に分かれます。
ひとつは消費者庁のサイトで検索すれば工場の住所まで分かる「公開された記号」、もうひとつは作った会社の中でしか意味を持たない「内輪の記号」です。
この記事では、どこまでが調べられて、どこから先は調べられないのか、その境目を一次資料をたどりながら見ていきます。
賞味期限の横にある、あの記号は何なのか
「ロット」は、同じ条件で作られた仲間のまとまり

まず内輪の記号のほうから見ていきましょう。ロット番号の「ロット」とは、ほぼ同じ条件のもとで作られ、ひとまとめに管理される製品のかたまりのことです。
同じ日に作った分で区切る会社もあれば、同じラインや同じ原料の袋で区切る会社もあるので、どこで線を引くかは製品ごとに違います。
たとえば朝の仕込みで焼いたクッキー1万袋に同じ番号を付けておけば、あとで何か問題が見つかったとき、その1万袋だけを探し出せばよいことになります。
農林水産省が事業者向けに出しているトレーサビリティ(食品がたどってきた道を追いかけられる仕組み)の手引きでも、入ってきた原料と出ていく製品にロットを決めて番号を付け、その対応を記録しておくことが基本の手順として紹介されています。
ロット番号は、食品の足あとをたどるための名札なんですね。
表示する義務は、実はありません
ここで少し意外なのが、一般的な加工食品の場合、ロット番号は食品表示基準で表示が義務づけられた項目ではないということです。
名称や原材料名、内容量、消費期限または賞味期限、保存方法、表示に責任を持つ事業者の名称と住所などは必ず書かなければならないのに対して、ロット番号はメーカーが自分たちの管理のために自主的に印字しています。
義務ではないので、付け方に全国共通のルールもありません。
製造日を並べ替えたものや、工場やラインをアルファベットで表すものなど、会社ごとに流儀が分かれていて、「ロット番号の読み方」を検索しても決定版の早見表が出てこないのは、そもそも共通の文法が存在しないからなんです。
調べられる記号には「+」が付いている
では、消費者が自分で調べて意味にたどり着ける記号はどれなのでしょうか。
手がかりは、記号の頭に付いた小さな「+(プラス)」です。
「+K2」の正体は製造所固有記号
製造者や販売者の名前のあと、あるいは賞味期限の近くに「+K2」のような記号があれば、それは製造所固有記号と考えてよいでしょう。
現在の制度では、この記号の頭に必ず「+」を付けることになっているからです。
食品表示基準では、製品を作った工場の名前と住所を表示するのが基本ですが、原則として同じ製品を二つ以上の工場で作っている場合には、あらかじめ消費者庁に届け出た記号で代用することが認められています。
工場ごとに袋を刷り分けなくても、共通の袋に記号だけを打ち分ければ済むというのが、この制度が生まれた理由でした。
記号に使えるのは数字、ローマ字、ひらがな、カタカナで、長さは10文字以内、届出は5年ごとに更新しなければなりません。

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消費者庁のデータベースで検索してみる
この記号は、消費者庁の「製造所固有記号制度届出データベース」で誰でも検索できます。
検索画面に記号を入れると、届け出た会社の名前と住所、そして実際に作っている製造者の名前と所在地が表示される仕組みです。
使うときのコツがいくつかあります。頭の「+」は新旧の制度を区別するための目印であって記号の一部ではないので、入力する必要はありません。
記号は完全に一致したものだけが探される一方で、同じ記号を別の会社が届け出ていることもあるため、結果が複数出たときはパッケージに書かれた販売者の名前と照らし合わせて絞り込みます。
検索マニュアルを読み込むと、細かいけれど面白い決まりも見つかります。
廃止された記号は一定の年数が過ぎると検索結果から消えること、そしてシステムが動いているのは午前4時から翌日の午前2時までで、深夜の2時間だけは検索できないことです。
夜ふかしをして調べようとした人が、たまたまこの時間に当たってしまうこともあるかもしれませんね。
問い合わせ先が書いてある理由
2016年4月に始まった現在の制度では、記号を使う会社に「応答義務」、つまり消費者から工場を聞かれたら答える義務が課されています。
具体的には、問い合わせに答えてくれる連絡先、工場の情報を載せたウェブサイトのアドレス、あるいは工場の一覧そのもののうち、どれかをパッケージに表示しなければなりません。
お客様相談室の電話番号や二次元コードがパッケージに印刷されているのは、親切心だけではなく、この決まりとも関係しているわけです。
古い制度のころは記号を見ても会社に聞く以外に手がなかったことを思うと、ここ10年ほどで食品のラベルはずいぶん開かれたものになったと感じます。
ロット番号には、公開の「辞書」がない
一方のロット番号には、届出の制度も全国共通の公開データベースもありません。
付け方が会社ごとに違う以上、読み方を自分から公開している商品でもないかぎり、番号だけを見て消費者が意味を確かめることはできないのが実際のところです。
それでもこの番号が無意味かというと、そうではありません。
メーカーのお客様相談室に問い合わせると、製品の状態を確認するためにロット番号を尋ねられることがあります。
消費者には読めなくても、メーカーにとってはその一袋がいつ、どのラインで作られたかを一瞬で引き出せる鍵になっているんです。
期限とまぎれないように書く、たったひとつの作法
表示の義務がないロット番号にも、守るべき作法がひとつだけあります。
消費者庁の「食品表示基準Q&A」(加工-25)では、6桁の日付のすぐ後ろに「A63」のような記号を切れ目なくつなげて印字すると期限が読み取れなくなるので、「消費期限」の文字と年月日を先に示すなど、期限がはっきり分かる形で区別するよう求めています。
区別の仕方としては、日付のあとに「LOT A63」と書いたり、「/ A63」のようにスラッシュで区切ったりする例が示されていて、年月だけで表示する場合も考え方は同じです。
賞味期限の後ろに少し間をあけて記号が並んでいるのは、デザインの都合ではなく、読み間違いを防ぐための工夫だったんですね。
それでも番号が「読める」食品がある
ここまで読むと、ロット番号は結局なにも分からない記号のように思えるかもしれません。
ところが食品の種類によっては、番号の読み方が公開されていたり、消費者が自分で履歴を調べられたりする例外があります。

缶詰のフタに刻まれた3段の記号
昔ながらの缶詰のフタには、3段に分かれた記号が打たれています。
日本缶詰びん詰レトルト食品協会の説明によると、上の段は品名記号で、最初の2文字が原料の種類、3文字目が調理の方法、4文字目が形や大きさを表し、真ん中の段が賞味期限、下の段が工場の記号という並びです。
最近は賞味期限だけを分かりやすく印字する缶が増えているそうですが、フタの数文字に中身と工場と期限をすべて詰め込んでいたというのは、印字できる場所が限られていた時代の知恵を感じさせます。
家に古い缶詰があれば、一度フタをじっくり眺めてみてください。
国産牛肉の10桁は、一頭ずつ調べられる
もうひとつの例外が、国産牛の精肉のパックなどに表示されている10桁の個体識別番号です。
これは牛トレーサビリティ法にもとづく番号で、牛の耳に付けられた耳標と同じものが、お店のラベルまで引き継がれています。
ただし、ひき肉や舌、加工や調理をした牛肉などは制度の対象外なので、すべての牛肉に番号があるわけではありません。
家畜改良センターの検索サービスにこの番号を入力すると、その牛の生年月日や性別、種別、母牛の番号、どこで育てられてどこへ移動したかといった履歴まで見ることができます。
ロットよりもさらに細かい「一頭ごと」の番号が一般に公開されているわけで、食品の番号のなかでは飛び抜けて透明度が高い存在です。
ロット番号が主役になる日
ふだんは読めなくても困らないロット番号ですが、私たち消費者にとってとりわけ大切な意味を持つ場面があります。
それが食品の自主回収、いわゆるリコールです。

リコール情報は、番号で照らし合わせる
2021年6月1日から、食品衛生法に違反する、またはそのおそれがある食品や、アレルゲンや消費期限など安全性に大きくかかわる表示を誤った食品を事業者が自主回収するときは、行政への届出が義務になりました。
届け出られた情報は厚生労働省の食品衛生申請等システムで公開されていて、商品名や回収の理由を誰でも確認できます。
このとき回収の対象は、多くの場合「賞味期限が○年○月○日のもの」や「ロット番号が△△のもの」という形で絞り込まれるので、手元の商品が対象かどうかは、パッケージの期限や記号と発表された内容を見比べれば判断できます。
意味は分からなくても、照らし合わせることさえできれば役目を果たすというのが、ロット番号の本質なのだと思います。
番号が細かいほど、捨てられる食品を減らせる
ロットによる絞り込みには、もうひとつ見逃せない効果があります。
ロットを細かく区切り、原料や製造、出荷の記録と結び付けておけば、問題が起きたときに回収の範囲をより狭く絞り込めるので、問題のない製品まで回収の対象に含まれにくくなります。
逆に区切りが粗ければ、その分だけ余計な製品まで巻き込んで回収することになりますよね。
つまりあの小さな記号は、消費者の安全を守ると同時に、食べられるはずの食品がむだに捨てられるのを減らすことにもつながっています。
賞味期限と消費期限の違いを知ることが食品ロスを減らす第一歩だとすれば、ロット番号はその裏側で静かに同じ仕事をしている仲間だと言えるでしょう。
まとめ:読めなくても、見比べることはできる
パッケージの記号のうち、「+」で始まる製造所固有記号は、消費者庁のデータベースで調べれば工場の名前と住所まで分かります。
それに対してロット番号は、表示の義務も共通の書き方もなく、基本的には作った会社が自分たちのために残している記録です。
どこまで分かって、どこから先は分からないのか、その境目を知っておくだけでも、ラベルを見る目は確実に変わります。
そして、読めない番号にもちゃんと出番があります。
リコールのニュースを見かけたら、発表された記号と手元の商品の記号を見比べてみてください。ふだんは誰にも注目されないあの数文字が、その瞬間だけは食卓を守るいちばんの手がかりになってくれます。
