
2027年3月19日、横浜の旧上瀬谷通信施設で「GREEN×EXPO 2027」が開幕します。
会期は9月26日までの約半年間で、ニュースでは「花博」「園芸博」、ときには「万博」とも呼ばれています。
呼び名がこれだけ揺れると、結局これは万博なのかと首をかしげたくなりますよね。
結論:大阪・関西万博と同じ「登録博」ではないが、BIE認定の国際博覧会です
GREEN×EXPO 2027は、2025年の大阪・関西万博と同じ登録博覧会(World Expo)ではありません。
国際園芸家協会(AIPH)から最上位の「A1」として承認され、さらに博覧会国際事務局(BIE)の認定も受けた国際園芸博覧会です。
神奈川県の特設ページは「1都3県で初めて開催される万博」と紹介し、同じページで「国際博覧会(認定博)」とも説明しています。
ですから「万博」と呼ぶのも間違いではありません。呼び名がややこしくなる原因は、BIEとAIPHという性格の違う2本の物差しが、同時にかかっていることにあります。
1本目の物差し:BIEが決める「万博」の種類

万博を名乗れるかどうかは、雰囲気や規模では決まりません。
1928年に結ばれた国際博覧会条約にもとづき、パリにあるBIEが認めた博覧会だけが国際博覧会、つまり万博です。
BIEが扱う博覧会は、登録博・認定博・園芸博・ミラノ・トリエンナーレの4種類あります。
登録博覧会(World Expo)

5年に1度だけ開かれる最大規模の博覧会で、会期は最長6か月、会場面積に上限はありません。
参加国が自前のパビリオンを建てられるのが特徴で、2025年の大阪・関西万博の会場は約155haでした。
次は2030年10月1日から2031年3月31日までのリヤド万博(サウジアラビア)です。
認定博覧会(Specialised Expo)

2つの登録博のあいだに1回だけ開ける中規模の博覧会です。
会期は最長3か月、会場は最大25haまでと決まっていて、会場は主催者が建て、参加国は割り当てられた区画を飾りつけます。
大阪とリヤドのあいだの1回は、2027年5月15日から8月15日まで開かれるセルビアのベオグラード博が使います。
古い資料に出てくる「一般博」「特別博」は、1988年の条約改正より前の呼び名です。
おおまかには、一般博が今の登録博に、特別博が今の認定博にあたると考えてください。
国際園芸博覧会(Horticultural Expo)

GREEN×EXPO 2027が属するのは、この3つ目の枠です。
BIEが認定の対象にするのはAIPHがA1として承認した園芸博だけで、1960年以降に認定された園芸博は23件あります。
横浜は2022年11月28日、BIEの第171回総会で認定されました。
2本目の物差し:AIPHが決める園芸博の格付け
AIPHは1948年にスイスのチューリッヒで生まれた、花や観葉植物の生産者団体でつくる国際組織です。
「園芸博」の格付けはBIEではなくこのAIPHが行っていて、現在は次の4つのカテゴリーに分かれています。
| 区分 | 名称 | 会期 | 最低面積 | 国際参加の条件 | BIEの認定 |
|---|---|---|---|---|---|
| A1 | 世界園芸博覧会 | 3〜6か月 | 50ha | 展示面積の5%以上・10か国以上 | 必要 |
| B | 国際園芸博覧会 | 3〜6か月 | 25ha | 展示面積の3%以上・国際参加者10者以上 | 不要 |
| C | 国際園芸展 | 4〜20日 | 6,000㎡ | 展示面積の10%以上・国際参加者6者以上 | 不要 |
| D | 国際園芸見本市 | 規定なし | 規定なし | 出展者の60%以上が園芸の生産・供給に関わる | 不要 |
A1だけが別格で、同じ国では10年に1回しか開けず、申請も開幕の6〜12年前に行う決まりです。
国の威信をかけたプロジェクトの重みが数字ににじみ出ていて、表を眺めているだけでも少しわくわくしてきます。
図解:2本の物差しが重なるのはたった1マス
縦にBIEでの位置づけ、横にAIPHの区分をとって、主な博覧会を置いてみたのが次の表です。
| BIEでの位置づけ \ AIPHの区分 | A1 | B | C・D | AIPHの対象外 |
|---|---|---|---|---|
| 登録博(World Expo) | ― | ― | ― | 大阪・関西万博2025、リヤド2030、大阪1970、愛知2005 |
| 認定博(Specialised Expo) | ― | ― | ― | ベオグラード2027、サラゴサ2008、沖縄1975、つくば1985 |
| 園芸博(Horticultural Expo) | ★GREEN×EXPO 2027、大阪花博1990 | ― | ― | ― |
| BIEの対象外 | 開幕時点では該当なし | ウドンタニ2026、蔚山2028、バグダッド2029 | イズミル2027(C)、IPMエッセン2027(D) | 地方博・各種フェア |
登録博と認定博はAIPHとは関係がなく、BIEの園芸博だけがAIPHのA1の列と重なっています。
開幕する時点で「A1なのにBIEの対象外」という博覧会はありませんが、準備段階なら例があります。
2029年のタイ・コラートは、AIPHのA1承認を受けたあと、2026年2月17日にBIEへ認定を申請しました。
「認定博なのに6か月・100ha」になる理由

GREEN×EXPO 2027は「認定博」と紹介されるのに、会期は約6か月、博覧会区域は約100ha(うち展示区域は約80ha)あります。
認定博の上限である3か月・25haとは、まるで数字が合いません。
理由はシンプルで、園芸博は認定博の一種ではなく、横に並ぶ別のカテゴリーだからです。
園芸博には、会期は最長6か月、同じ国での開催は10年以上あける、といった独自のルールがあります。
日本語の「認定博」は英語のrecognised(認められた)を訳した言葉なので、認定博と園芸博の両方に使われてしまうわけです。
もうひとつの決め手が、先ほどのベオグラードです。
大阪とリヤドのあいだに開ける認定博は1回だけで、その枠はすでにベオグラードが使っています。
もし横浜が同じ枠の認定博なら2027年に2つ並んでしまい、制度が成り立ちません。
条文を読み比べるより、この一点のほうがずっとすっきり腑に落ちると個人的には感じています。
「花博」は格付けではなく愛称です

元祖は1990年の大阪花博
「花博」の元祖は、1990年に大阪・鶴見緑地で開かれた「国際花と緑の博覧会」です。
会場は140ha、入場者は約2,313万人にのぼり、BIEの公式データでは横浜と同じA1園芸博に分類されています。
ただし国土交通省などの資料では「BIE特別博」とも書かれていて、同じ博覧会が資料によって別の箱に入っているのが混乱のもとです。
浜名湖花博はA1ではありません
2004年の浜名湖花博も「花博」と呼ばれましたが、AIPHの記録では旧分類の「A2/B1」で、A1ではありません。
AIPHの区分はかつてA1・A2・A3・B1・B2の5つで、今はA1・B・C・Dの4つに改められています。
国土交通省の資料は旧A2・B1を現行のBにあたると整理しているので、古い記事でA2やB1を見かけたら旧分類だと考えてください。
「花博」は親しみやすい愛称としては優秀ですが、格付けの話になると途端に足を引っ張る言葉だと思います。
制度の目で数え直すと、GREEN×EXPO 2027は1990年以来37年ぶりに日本で開かれるA1園芸博になります。
登録博・認定博・A1園芸博の比較表
| 項目 | 登録博(World Expo) | 認定博(Specialised Expo) | A1園芸博(Horticultural Expo) |
|---|---|---|---|
| 決める機関 | BIE | BIE | AIPHが承認し、BIEが認定 |
| 開催間隔 | 5年に1度 | 登録博のあいだに1回 | 同じ国は10年以上あける |
| 会期 | 最長6か月 | 最長3か月 | 3〜6か月 |
| 会場面積 | 上限なし | 最大25ha | 最低50ha |
| パビリオン | 参加国が建てられる | 主催者が建てて提供 | 博覧会ごとに設計 |
| 日本での例 | 1970大阪、2005愛知、2025大阪・関西 | 1975沖縄、1985つくば | 1990大阪、2027横浜 |

2025〜2031年の主な博覧会
| 年 | 開催地 | 分類 | 会期 |
|---|---|---|---|
| 2025 | 大阪(日本) | 登録博 | 4月13日〜10月13日 |
| 2026 | ウドンタニ(タイ) | AIPH B | 11月1日〜2027年3月14日 |
| 2027 | 横浜(日本) | AIPH A1・BIE認定 | 3月19日〜9月26日 |
| 2027 | イズミル(トルコ) | AIPH C | 4月15日〜5月2日 |
| 2027 | ベオグラード(セルビア) | 認定博 | 5月15日〜8月15日 |
| 2028 | 蔚山(韓国) | AIPH B | 4月22日〜10月22日 |
| 2029 | ナコンラチャシマ(タイ) | AIPH A1(BIEに認定申請) | 11月10日〜2030年2月28日 |
| 2029 | バグダッド(イラク) | AIPH B | 10月1日〜2030年4月1日 |
| 2030 | リヤド(サウジアラビア) | 登録博 | 10月1日〜2031年3月31日 |
| 2031 | ミネソタ(アメリカ) | AIPH A1 | 5月1日〜10月15日 |
2027年は横浜の会期中に、イズミルの園芸展とベオグラードの認定博が相次いで開かれます。
BIEとAIPHの2つの枠組みが同時に動く、博覧会という制度の輪郭がいちばん見えやすい一年になりそうで、今から楽しみです。
まとめ
- GREEN×EXPO 2027は大阪・関西万博と同じ登録博ではないが、BIEの認定を受けた国際博覧会なので「万博」と呼んでも間違いではない
- BIEの博覧会は登録博・認定博・園芸博・ミラノ・トリエンナーレの4種類で、園芸博は認定博とは別の枠
- 園芸博の格付けはAIPHが行い、A1・B・C・Dのうち、BIEの認定が必要なのはA1だけ
- 会期6か月・約100haという規模は、認定博ではなく園芸博のルールによるもの
- 「花博」は格付けではなく愛称で、A2やB1はAIPHの旧分類
「これって万博なの?」と聞かれたら、「万博と呼んでいいけれど、大阪・関西万博のような登録博ではなく、園芸博の最上位」と答えるのがいちばん正確です。
■参考にした資料
- BIE「About World Expos」 https://bie-paris.org/site/en/about-world-expos
- BIE「About Specialised Expos」 https://bie-paris.org/site/en/expos/specialised-expos/about-specialised-expos
- BIE「About Horticultural Expos」 https://www.bie-paris.org/site/en/expos/horticultural-expos/about-horticultural-expos
- BIE「Expo 2027 Yokohama」 https://www.bie-paris.org/site/en/2027-yokohama
- BIE「Expo 1990 Osaka」 https://www.bie-paris.org/site/en/1990-osaka
- BIE「Thailand requests Recognition for Horticultural Expo 2029 Korat」 https://www.bie-paris.org/site/en/news-announcements/international-horticultural-exhibition/thailand-requests-recognition-for-horticultural-expo-2029-korat
- AIPH「Approved Expo Categories」 https://aiph.org/expos/categories/
- AIPH「Approved Expo Calendar」 https://aiph.org/expos/calendar/
- AIPH「Expo History」 https://aiph.org/expos/history/
- 国土交通省・農林水産省「国際園芸博覧会と政府出展の概要」 https://www.mlit.go.jp/toshi/park/content/001896103.pdf
- 国土交通省「国際園芸博覧会の概要」 https://www.mlit.go.jp/toshi/park/content/001313832.pdf
- 神奈川県「2027年国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)特設サイト」 https://www.pref.kanagawa.jp/osirase/0520/2027_kokusaiengeihaku/index.html
※本記事は2026年9月時点の公表情報にもとづいています。会期や分類は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
